「ちょっとした一言や表情が気になって眠れない」
「人混みや大きな音だけでぐったりしてしまう」
それはHSP(Highly Sensitive Person/繊細さん)という生まれ持った気質が関係しています。
HSPは繊細な気質であり、周囲からの評価に敏感だったり、自身をうまく認めてあげられない特徴があります。
こうした状態をそのままにしておくことで、生きづらさを感じてしまいます。
HSP自体を根本から治すことはできないものの、考え方や行動を変えることで、生きづらさを改善することができます。
この記事では、以下の内容について詳しく紹介します。
- HSPの基本知識と4つの特徴(DOSE)
- 日常で起きやすい「あるある」事例
- 今日から試せるセルフケア方法
上記の内容をもとに、繊細さを弱さと捉えるのではなく、あなたの大切な個性として理解することを手助けします。
この記事を読んで、心が軽くなる行動に取り組んで生きづらさを改善しましょう。
- HSPの気質と特徴(DOES)をわかりやすく解説
- 共感しすぎ・疲れやすさ・完璧主義などの「あるある」を紹介
- 日常で実践できるセルフケアや感情整理の方法を紹介
目次
HSPとは?4つの特徴(DOES)をわかりやすく解説

HSP(Highly Sensitive Person)は非常に繊細な気質を持つ人を指しています。
神経系の違いから外部の刺激に対して、通常の人よりも敏感に反応する特徴があるのです。
人口の約15〜20%がHSPとされ、生物学的なこの気質は成長や環境の影響を受けても完全に変わることはないと言われています。
HSPは診断名ではなく、病気や障害でもありません。
あくまで個々の気質を表す言葉であり、「敏感さ」を特徴とする人々が持つ特性を理解するための概念です。(心理学者エレイン・N・アーロン博士が提唱)
HSPの人は日常生活で「なんだか他の人よりも疲れやすい」「些細なことが気になってしまう」と感じることが多くあります。
それは単なる弱さではなく、繊細なセンサーを持っているからこそ起きることなのです。
HSPの特徴
HSPの特徴は「DOES」という4つの要素に集約されます。
Depth of Processing(処理の深さ)
HSPはものごとを深く考え、情報をていねいに処理する傾向があります。ささいなできごとや言葉の裏側にある意味を考えるため、共感力が高く、他者の気持ちを敏感に察知します。
Overstimulation(過剰な刺激を受けやすい)
刺激に対して敏感で、音、光、人混みなどの環境要因に影響を受けやすい特徴を持ちます。多忙なスケジュールや騒がしい場所は疲労を引き起こしやすく、休息が必要です。
Emotional Reactivity(感情的反応の強さ) & Empathy(共感力)
他人の感情に対する共感力が高く、他者の喜びや悲しみを自分のことのように感じます。この感情的な反応は強みでありながら、エネルギーも消耗します。
Sensitivity to Subtle Stimuli(微細な刺激への感受性)
周囲のちょっとした変化や人々の態度の違いなど、普通なら見過ごされるようなささいな刺激に気づきやすい特徴を持ちます。観察力が鋭く、気にしすぎるとストレスがかかります。
これらの4つが重なって現れることで、HSPの人は日常の中で独自の感じ方や考え方をする傾向があります。
HSPあるある|空気を読みすぎて疲れる理由
他人の感情に飲み込まれることがある
HSPは周囲の誰かが機嫌が悪いだけで「自分がなにかしてしまったかな?」「自分のせいかも…」と感じてしまうことがあります。
感情の起伏が激しい人が近くにいると自分まで不安定になってしまうことも。これはHSPの【共感力の高さ】が関係しています。
本来であれば全然責任を感じることもない場面・事柄にも責任を感じてしまいます。
そして「どうすればことがおさまるだろう?」「どうすれば相手の機嫌がなおるだろう?」と考え込んでしまうのです。
本人が意識せずとも、知らずしらずのうちに自分の感情が消耗することがHSPの悩みです。
想像してみてください。眼の前で激しい喧嘩がされていたらどうでしょう?
HSPは目の前の状況を冷静に分析することができます。
だからこそ、どちらの言い分にも共感できる部分があると理解し、共感して自分自身が当事者のように疲れ切ってしまうのです。
空気を読みすぎて疲れてしまう
HSPはとにかく空気を読んで行動します。誰かと会話しているときに生まれる沈黙もとても苦手です。
会話時の沈黙や発言内容で「気まずくさせたかな?」「今の発言変な意味に捉えられていないかな?」と気をもむことが多くあります。
人によっては今日のできごとを一晩寝たら忘れることができるでしょう。
一方でHSPは、しっかりと記憶して考え込んでしまうタイプです。夜にその日のできごとを振り返り、眠れなくなることも珍しくありません。
HSPは空気を読んで自分に非があったように振る舞うこともあります。
穏便にその場がやり過ごせるように努め、自分を犠牲にした行動を取りがちです。
人間関係に敏感で気配り上手ですが、その分自分の内側にストレスを溜め込んでしまいやすいのも特徴です。
職場での疲れに関する対策はこちらの記事で詳しく解説しています。
完璧を追い求めて自分を責めてしまう
HSPは「もっとちゃんとやらなきゃ」「これじゃダメだ」と小さな失敗でも自分を責めてしまう傾向があります。
周囲の人には「わからない」「気にされない」点でも手を抜かずにやり抜きますが、その行動が自分自身を追い込んでしまう結果に。
期待に応えようと頑張り過ぎて、心も体も限界に近づいてしまうことも珍しくありません。
HSPは「真面目」「責任感が強い」と言われることが多いですが、その裏では「自分に厳しすぎる」という傾向もあるのです。
「自分よりすごい人はたくさんいる」「もっと頑張らなくてはいけない」と思いやすいため、人からの褒め言葉も素直に受け取ることができません。
完璧を目指し、周りと比較をしながら行動してしまうので、自分の頑張りをうまく認めてあげられない特徴があります。
完璧主義の原因、やめる方法についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
HSPセルフチェック

以下のリストを見ながら当てはまる項目にチェックを入れてみましょう。合計7つ以上当てはまるようであればHSPの傾向が強いかもしれません。
- 大きな音、人混みが苦手
- 誰かに怒られているのを見ると胸が痛くなる
- 涙もろい、感動しやすい
- 小さなミスをいつまでも引きずる
- 初対面や集団が苦手
- 暗いニュースに深く落ち込む
- 人の目が気になる
- 一人の時間がないと疲れる
- 雰囲気や空気の変化に敏感
- ストレスが身体に出やすい(胃痛、頭痛など)
こちらの項目がすべて当てはまらなくでも、日常生活の中で「生きづらさ」を感じているようであれば、それは大切なサインです。
診断ではなく、自己理解のきっかけとして活用してみてくださいね。
HSPとうまく付き合うために
HSPは生まれながら持った気質です。病気ではないので治ることもありません。
私もHSP気質を持ちながら15年の間、会社で勤めています。
周囲の人の視線が気になり、自分の発言内容に対する評価に恐れ、時には板挟み状態になりながらも頑張っています。
どうしてこんなにも生きづらいのだろう?と思ったこともあります。
HSPとして生まれてしまったら、ずっと生きづらさを感じて生活しなければいけないのでしょうか?
実はそうではありません。私も考えからや行動を変えて改善した経験があります。
この章ではHSPとうまく付き合っていくポイントを紹介します。どれも私自身が経験して効果を実感したものです。
今日からできる内容なので、ぜひチャレンジしてくださいね。
「疲れやすい前提」で予定を組んでみよう

HSPは他の人と比べて「消耗しやすい」ことを前提した行動やスケジュールの管理が大切です。
1日に何件も予定を詰め込んだり、短い期間に頑張りどころをギュッと詰め込んでしまうと、精神的・肉体的にも限界がきやすくなります。
「負担が大きそうな打ち合わせは1日に複数回予定しないようにする」
「連続で予定を入れると消耗が激しいので午前と午後でバラして予定を入れる」
など自分の体調に影響が出ない程度に予定や時間の配分を調整しましょう。
かといって、すべてを思い通りに調整することは難しいですよね。そんなときはメリハリをつけることが有効です。
頑張りどころの翌日に休みを取る予定をあらかじめ組み、体と心も休ませましょう。
五感を整えよう

HSPは光や音の五感にとても敏感です。
意識していない日常生活の中からも多くの刺激を感じ取って消耗してしまうので、刺激を受けにくくする工夫をすることが有効です。
| 音 | ノイズキャンセリングイヤホンの使用、自然音を聞く |
| 光 | 間接照明を利用した刺激の低減、カーテンを利用した明るさの調整 |
| 香り | アロマオイル・ハーブティーなどでのリラックス |
| 触覚 | 刺激の少ない柔らかい素材のタオルや服を選ぶ |
| 視覚 | シンプルでごちゃつきの少ない部屋で生活する |
これらのように、色々な工夫の仕方があります。これはあくまで予防であり、解決方法ではないのでご注意ください。
職場のような自分で大きく環境を変えられない場所ではできる範囲での調整をしてみましょう。
- デスクの上に観葉植物やお気に入りのアロマを置く
- 休憩時に好きな飲物を飲む など
ジャーナリングで感情を書き出してみよう

周囲からの刺激で頭の中が混乱したり、考えが止まらなくなってしまったときには、自身が感じていることを紙に書き出してみましょう。
パソコンやスマホへの打ち込みでも同様の効果は期待できます。
自分の中のモヤモヤを外に出し切るという意味では、手を動かして紙に書く方法を個人的におすすめしています。
こちらのポイントは「うまくまとめようとしない」ことです。
真面目で完璧主義なHSPは何事も頑張ってしまいがちですが、この目的は自身が感じていることを外に出すことです。
上手な文章・長い文章でなくて構いません。「〇〇されて嫌だった」「今日は仕事を頑張りすぎて疲れた」などの短い言葉で、その日に感じたことを書き出してみましょう。
書いたあとに改めて見直すことで「自身が感じたことの原因」「次回同じことを感じないようにするための対策」などが見えてくることもあります。
気持ちを整理することで安心感を得られるので毎日の継続がおすすめです。
助けを求めてみよう

HSPは一人で抱え込みがちです。
「こんな考えの自分が嫌だ」「恥ずかしい」「情けない」など、自分に厳しく、自分を大切ににできない傾向があります。
人に助けを求めることは決して悪いことではありません。弱いことでもありません。
一人で抱え込んで辛い思いをしているのであれば、カウンセラーや医師、同じような悩みを持っている人と話してみるのも一つの手段です。
逃げているとは考えず、自分を守るための選択肢として行動するという考えでチャレンジしてみましょう。
まとめ

今まで漠然と生きづらい、苦しいと思っていた人に取ってはHSPという言葉を知るだけで「自分が変じゃなかったんだ」と思えた人も多いはずです。
考え方や行動を変えることで、生きづらさを改善することもできます。
感じすぎてしまうあなた、気にしすぎてしまうあなた、それは「やさしさのかたち」でもあります。
すべてを一気に変えてしまう必要はありません。少しずつ、「自分の心が軽くなる選択」をしていけば、普段の生活もきっと変わっていくことでしょう。
あなたの繊細さは時にあなたや周囲の人を照らす力にもなり得ます。
まずはそんな自分を「認めてあげる」ことからはじめてみませんか?

