完璧主義の性格に悩み、職場での過ごしやすさや生きづらさを感じているHSPは多くいます。実はこの状態は「完了主義」へと変化させることで改善することができます。
完璧主義が原因で作業に時間がかかったり、頑張って資料を作った割に周囲の反応が良くなくて落ち込んだりすることがありますよね。
私もそんな経験を数多くしてきて、凹むこともあったし、家に帰ったらぐったりと倒れ込むこともありました。
完璧主義の人は準備周到でもあり、自身がなっとくできる状況にならないと行動を起こせない人が多くいます。こんな状態ではチャレンジする機会を自ら奪っているものです。
完璧主義から完了主義へ変わることができれば、チャレンジへのハードルも下がり、自身の成長に繋がりやすくなります。
この記事では完璧主義の原因と、完了主義へ移行するポイントを紹介します。
- HSPは周囲に敏感なため、完璧主義になりやすく心の負担が大きくなりがち。
- 完璧主義は親の育て方だけでなく、学校や職場環境、社会の価値観、自分の考え方が重なって生まれる。
- 「完了主義」を取り入れて80点で終わらせる練習をすることで、心の疲れを減らし行動しやすくなる。
目次
完璧主義の原因とHSP気質の関係性
HSPとは
HSP(highly sensitive person)とは人が持ち合わせている気質のことを指しています。
近年では繊細さんという言葉でも認知されることが増えてきており、少しずつ理解が進んできています。

HSPと完璧主義
HSPは、外部からの刺激や他人の評価に強く反応しやすい特徴を持っています。
【刺激に敏感】
相手の声のトーンや表情、気配までを敏感に感じ取るため、何度も手直ししてしまう。
【評価に影響されやすい】
失敗やミスを極端に恐れてしまうため、中途半端なものを作ることを嫌がる。
【基準が高い】
丁寧さを大切にする思いが行き過ぎて「完璧でなければいけない」という意識に変わり、時間をかけすぎてしまう。
こうした傾向は、仕事の締切や人間関係のコミュニケーションで顕著になりがちです。
完璧主義である私は社内用の資料ですら作成に時間がかかってしまいます。背景にあるのは自分の仕事振りを気にする心です。
「この程度の資料しか作れないのか」「ここ間違っているな」なんて思われたくないので、なんども確認をしながら修正を繰り返してしまいます。
こんな状態を続けることは、心のストレスが高い状態で過ごすこととなります。だからみんな生きづらさを感じているのですね。
ここで大切なのは必ずしも「HSP=完璧主義」ではないという点です。HSPのていねいさは良い面でもあり、物事を成功させる力でもあります。
問題なのは「度を越えて気にしすぎる」ときで、適正に能力を使うことができれば有効であるし、これを改善する方向はいくつもあります。
完璧主義の原因は親の育て方以外に何がある?
「親の育て方が原因で完璧主義になった」と耳にすることがあります。確かに、幼少期に次のような環境があると完璧主義を強める可能性があります。
【過剰な期待】
「良い点を取れたときだけ褒められた」経験は、基準を高いまま固定してしまう。
【厳しい叱責】
「ミスはダメ」という学習は、失敗をしたらダメという思考になりやすい。
しかし、それだけでは育て方によって完璧主義になることは説明しきれません。多くのケースで、環境・考え方・社会的背景などが関連しあっていると考えられます。
学校・職場での評価文化
減点主義のテストや採点
【事例】100点満点のテストや一発勝負の試験では、1つのミスが目立つため「失敗=ダメ」という感覚を育てやすい。
【結果】「90点でも上出来」と受けとめる練習が少ないまま大人になると、完璧を求める思考が残りやすくなる。
成果主義の職場
【事例】数字やスピードだけで評価される職場では、「完璧に仕上げないと認められない」と感じやすくなる。
【結果】結果だけでなく過程をほめてもらう経験が少ないと、ミスを恐れて行動が遅れやすくなります。
社会や時代の影響
SNSによる比較
【事例】友人や知らない人の成功や華やかな生活が毎日流れてくることで、「自分も完璧に見せないと」と無意識に競争してしまう。
【結果】他人の基準で自分を測り続けると、心が休まらず自己肯定感が下がります。
努力が美徳という文化
【事例】「最後まで頑張るのがえらい」「失敗してはいけない」という考えが根強い社会では、少しの手抜きが罪悪感につながる。
【結果】完璧にやり切らないと価値がないと思い込みやすくなります。
情報の多さ
【事例】インターネットで正解がすぐに探せる時代は、「もっと良い方法があるかも」と迷いが増えやすい。
【結果】決めたことに自信を持てず、完璧な答えを探し続けて行動が遅くなります。
自分の考え方や心のクセ
0か100か思考
【事例】「できたか・できないか」「正しいか・間違いか」の2つだけで考えてしまう。
【結果】60点や70点の成果を認められず、「まだ足りない」と感じてしまいます。
未来の不安を大きく想像する
【事例】「失敗したら笑われる」「評価が下がる」と、まだ起きていない未来を強く心配する。
【結果】行動する前に疲れ切り、チャレンジの機会を逃しやすくなります。
他人の気持ちを優先しすぎる
【事例】「嫌われたくない」「迷惑をかけたくない」と相手の感情を過剰に想像してしまう。
【結果】自分の意見を後回しにし、完璧に準備してからでないと動けなくなります。
このように、完璧主義は「親」だけではなく、学校・社会・自分の考え方などいろいろなものが重なって起こります。
完璧主義が原因でうつ病になることがある?
完璧主義とうつ病
完璧主義は病気ではありませんが、強くなりすぎると心の調子をくずすことがあります。たとえば、このようなことをしてしまって心と体も疲れ切ってしまうことも。
高すぎる目標を立ててしまう
【事例】一つの資料を「完璧に仕上げて上司を驚かせたい」と思い、必要以上に調査や装飾を重ねてしまう。
【結果】達成できないと自分を責め、達成しても「もっと良くできたはず」と満足できず、常に不安が続く。
取りかかれずに締切ギリギリになる
【事例】「完璧にまとめる準備が整ってから」と考えて動けず、気づけば提出前日。
【結果】焦りと緊張で作業効率が落ち、睡眠不足や頭痛など体調にも影響する。
自分を責めてさらに基準を上げてしまう
【事例】小さなミスを見つけて「なんでこんなこともできないんだ」と自分を責める。
【結果】次は同じ失敗をしないようにと基準をさらに高く設定し、努力しても安心できない悪循環に陥る。
このような状態が続くと、うつ病の入り口とも言えるサインが現れることがあります。
気をつけたいよく見られるサイン
・眠っても疲れが取れない
・興味や楽しみを感じなくなる
・同じことを何度も考えてしまう
・小さなミスでも強く自分を責める
・「生きていても意味がない」と思う瞬間がある
2週間以上こうした状態が続く場合、心の病気の可能性があるため早めに相談することが重要です。
私自身、適応障害という精神疾患にかかった経験があります。
周囲からの評価に怯えて会社では常に全力を出し切り、帰宅したらぐったりして動けないなんてことも珍しくありませんでした。
家庭も持っているので休みの日も一人で過ごすことはなく、自身の休息の時間がないと感じることも。
HSPの場合、家族にも気を遣ってしまう節があり、こんな状況に陥りがちです。HSP×完璧主義である人は注意が必要です。
完璧主義を脱却するためのポイントは完了主義
完璧主義を少しずつ手放すための考え方が「完了主義」です。完了主義とは「100点でなくても目的が達成できたら終わりにする」という方法です。
ここでは会社での資料作りの場面を例にして完了主義の方法を説明します。
終わりの基準を決める
【具体例】「誤字がない」「数字が正しい」「3つの見出しがある」までできたら完了とする。
【結果】どこまでやればいいかが明確になり、延々と直し続けることがなくなる。
【ポイント】基準は数値や条件で決めると迷いにくい(例:見直しは2回まで、文字数は500字以内など)。
時間で区切る
【具体例】資料の見直しは15分、下書きは2時間までとタイマーをセットして作業。
【結果】時間切れの合図があることで「ここで終わらせよう」と気持ちが切り替えやすくなり、先延ばしを防げる。
【ポイント】質より時間を優先する意識を持ち、タイマーやスマホのアラームを活用する。
80点で出してみる
【具体例】誤字脱字と主要データだけ確認して、文章の細かい表現はそのまま提出する。
【結果】相手からのフィードバックで修正点が具体化し、効率よく改善できる。提出のスピードも上がる。
【ポイント】「完璧は提出してから作る」と考え、初回から100点を目指さない。
自分にやさしい言葉をかける
【具体例】「今日できたことは十分」「次に直せばいい」と声に出して自分に伝える。
【結果】失敗や不十分さにとらわれず、「ここまでやれた」という安心感が残る。気持ちが軽くなり、次の行動につながる。
【ポイント】自己否定の言葉を禁止し、短くても前向きなセルフトークを習慣にする。
決めごとを作る
【具体例】「30分迷ったら送信する」「指摘が3つを超えたら次回に回す」とあらかじめルール化する。
【結果】迷ったときに自動的に判断でき、余計な思考にエネルギーを奪われなくなる。
【ポイント】「もし〇〇なら、△△する」と条件付きで決めておくと実行しやすい。紙に書いて目に見える場所に置くと効果的。
小さな「終わった」を積み重ねることで、「80点でも大丈夫」という安心感が少しずつ育ちます。
実際に私もこの小さなルールを決めて行動することによって気持ちが楽になりました。
HSPはまじめな性格の人が多く、設定したルールを守るのは得意です。設定したルールに従うことで「頑張れた」という気持ちにもなれます。
精神疾患は気持ちに影響するところも大きく、自分で感情をコントロールできるようになることは有効です。
完璧主義で生きづらさを感じているHSPには、ぜひ完了主義を意識して生活してみてもらいたいです。
FAQ
Q1. HSPの完璧主義は治りますか?
A. 気質は変えられませんが、考え方とやり方を工夫すると心の負担を減らせます。完了主義・タイムボックス・if-thenルールが有効です。
Q2. 完了主義と「手抜き」は違いますか?
A. ゴールが達成できたら完了とする考え方です。どこまで仕上げればOKかを先に決めて、最低限のチェックだけは必ず行いましょう。
Q3. 仕事で80点提出は怒られませんか?
A. ゴールの基準を事前に共有すれば、最初は完璧でなくてもOKです。初稿を8割の状態で出して、指摘を反映しながら仕上げるとよいでしょう。
Q4. 先延ばし癖を直すための最初の一歩は?
A. まずは3分だけ手をつけてみましょう。そのあと15分だけ集中して作業します。小さく区切って「終わった」を積み重ねることが大切です。
Q5. うつが不安な時は?
A. 気になる症状(気分の落ち込み・疲れが取れないなど)が2週間以上続いたら、迷わず医師やカウンセラーなどの専門家に相談してください。まずは自分の安全を守り、休める環境を整えることを最優先にしましょう。
まとめ
完璧主義によって感じる生きづらさは、完了主義に変化することで改善されます。
この記事ではそんなHSPに向けて完璧主義の原因や、完了主義の方法を紹介してきました。
・HSPは周りに敏感なため、完璧主義になりやすい。
・親の育て方だけでなく、学校や職場、自分の考え方や社会の影響など多くの原因が関係している。
・完璧主義が強くなると心と体が疲れて、うつ病などにつながることもある。
・「完了主義」を使って80点で終わらせる練習をすることで、少しずつ楽になれる。
完璧でなくても、あなたの価値は変わりません。今日できる小さな完了をひとつ決めて、まずはやってみてください。
その一歩が、あなたをもっと自由にしてくれると思いますよ。