- HSPならではの繊細さと感情のおおきな揺れうごきが「泣く」という行動に繋がる
- 「泣いた」という事実は変わらないため、泣いた後の行動・考え方が大切
- できたことを記録して自己肯定感を上げよう
目次
HSPが怒られると泣いてしまう理由
感情の敏感さ
HSPは感情に敏感で周囲の環境や他人の感情に深く影響を受けやすい気質があります。他の人であれば受け流せるような注意や叱責でも大きなストレスを感じやすい特徴があります。
ストレスや緊張が高まっている状況では、感情をうまくコントロールできなくなって泣いてしまうことがあるのです。
また、他人からの見え方や評価を気にしすぎてしまうHSPは他人の言動に対して感情が揺れ動くことが多くあります。そのため他人に振り回されることが多くなってしまうのです。
これは感情のコントロールが上手くできなくなるひとつの要因であり、こうなってしまっていることを自覚しない限り対策が難しいことでもあります。
自身がどのような性質を持っているかを把握して認め、それと上手く付き合いながら生活するように心がけることが大切です。
自信の不足
自信の不足は感情のコントロールに影響を与えることがあります。以下の事例を自分にあてはめて想像してみてください。
【例1】入社時からずっと同じ業務を行い、経験に基づいた工夫や緊急の対応ができる
【例2】部署移動をしてやっと業務に慣れてきた時期で、基本的なことしかこなせない
上記の状況でこんな言葉をかけられたとします。
このやり方間違ってるんじゃない?上手くいかないよ?
【例1】の場合はこの発言を受け止めつつ、自分なりの回答を返すことができるでしょう。こちらは経験に基づく自信がもたらす状況です。
一方で【例2】の場合は「え?そうなの?どうしよう…わからない…」と戸惑って不安になるだけ。その場の空気や受けた言葉の内容も含めて怖くなり泣いてしまう可能性も。
自信がないと自分の発言・行動にも責任が持ちづらくなります。間違っていると嫌だからと、そもそも発言や行動のアクションに移行しづらいという場面もあるほど。
自信をつけるためには小さな成功体験を積み重ねることが大切です。チャレンジ&成功体験は自己有用感を感じたり、自己肯定感を上げることにつながります。
ストレス発散
HSPは他人に振り回されやすく、自分を責めがちで不安定になりやすいため、夜になると一人でポロポロと涙をながしてしまうことがあります。
悲しいから泣く・辛いから泣くと想像してしまうとネガティブなイメージになりますが、泣くこと自体は決して悪いことではありません。
泣くことは感情表現の一種でストレス発散につながり、感情的な緊張や不安感が緩和される効果も確認されています。
【泣くことでストレス発散になる理由】
涙にはストレスホルモンである「コルチゾール」や「アドレナリン」が含まれている。
泣くことでこれらのホルモンが排出されてストレス軽減につながる。
また、泣くことは自己表現の一環であり、自身の感情を認識して外部に放出する手段として役立ちます。
このような理由で心理的な負担が軽減されるため、心から泣いた後にスッキリとした気分になるのです。
極端に涙を流したり、持続的に泣き続けることは、逆にストレスを増加させる可能性があるため注意
怒られた時の対処法
冷静に物事を見る
自分が怒られてしまった時はどんな状態になるか考えてみましょう。
怖くて何も言えない・カッとなって言い返してしまう・どうすればいいかわからずにあたふたしてしまうなど、人によって表に出る態度や感情は様々です。
怒られたその瞬間におすすめの対処法のひとつが冷静になることです。
いやいや、怒られている時に冷静でいることなんて無理でしょ?他人が怒られてる訳じゃなくて自分が怒られているんだから!と思った人は惜しい考え方ができています。
冷静になれない理由のひとつが当事者として色々な感情がこみあげてしまうこと。当事者であることは間違いないのですが、自分の中にいる失敗した一人が怒られていると考えると捉え方は変わります。
こういう失敗をする人はこのような理由で怒られてしまうと、客観的に見ることができるので冷静になることができるのです。
冷静になることで、「失敗をした過去の自分はこのような理由で怒られてしまった。こう改善しよう」とポジティブな考え方ができるようになります。
感情の整理をする
怒られた時は何とかこらえることができても、家に帰ってきた後に感情が高ぶってモヤモヤしてしまうこともありますね。
そんな時は感情の整理をすることがおすすめです。
感情を整理するためには、自分の気持ちを書き出すことが効果的です。最近はジャーナリングという言葉で少しずつ認知が増えていますね。
自分の気持ちを書き出すことで以下のような効果が期待できます。
【感情の可視化】
→自身が感じていること・考えていることを文字に起こすことで、自分が物事に対してどのような考えを持っているかがわかったり、自分を悩ませている原因が見つかったりします。
【ストレス軽減】
→自身が内側に感じているモヤモヤを外に吐き出すことで、心の余裕とストレス軽減につながります。
職場でHSPの人が泣いている時は
HSP自身が考えること
感情が抑えきれずに泣いてしまったとしても、それを失敗だととらえないようにしましょう。涙が流れてしまうということは自分のキャパを越えている可能性があります。今は心がいっぱいになっていると自身の状態を受け入れるように考えましょう。
上記のように考えたくても周囲の目線を気にして落ち着けないということもあるでしょう。可能であれば静かな場所に移動して自分の気持ちを整理する時間を設けましょう。まずは深呼吸がおすすめです。
自分の中での整理ができたならひとまずOKです。もし、それらを話すことができるような信頼できる人が職場にいる場合は話を聞いてもらうのも良いでしょう。
周囲の人が考えること
目の前で泣いていたら心配して話しかけ、理由を聞いてしまいがちですが、そっと見守ることが大切です。何も声掛けをしないとHSPも不安になるので、一言添えた上でそっとしてあげるのが良いでしょう。
もし場所を移動させる手伝いができるようであればサポートして1人にしてあげましょう。そばにいて様子を見守る場合でも、落ち着いたタイミングで「大丈夫?」のような短めの言葉で声掛けをしてあげてくださいね。
無理に話を始めるのではなく、HSPが話せる準備ができるまで待ってあげるのが良いでしょう。
HSPの特性と泣くことの関係
HSPとは?
HSP(Highly Sensitive Person)は非常に繊細な気質を持つ人を指し、神経系の違いから外部の刺激に対して通常の人よりも敏感に反応します。人口の約15〜20%がHSPとされ、生物学的なこの気質は成長や環境の影響を受けても完全に変わることはないと言われています。
HSPは診断名ではなく、病気や障害でもありません。あくまで個々の気質を表す言葉であり、「敏感さ」を特徴とする人々が持つ特性を理解するための概念です。
HSPの特徴
HSPの特徴は「DOES」という4つの要素に集約されます。
- Depth of Processing(処理の深さ)
- Overstimulation(過剰な刺激を受けやすい)
- Emotional Reactivity(感情的反応の強さ) & Empathy(共感力)
- Sensitivity to Subtle Stimuli(微細な刺激への感受性)
Depth of Processing(処理の深さ)
HSPはものごとを深く考え、情報をていねいに処理する傾向があります。ささいなできごとや言葉の裏側にある意味を考えるため、共感力が高く、他者の気持ちを敏感に察知します。
Overstimulation(過剰な刺激を受けやすい)
刺激に対して敏感で、音、光、人混みなどの環境要因に影響を受けやすい特徴を持ちます。多忙なスケジュールや騒がしい場所は疲労を引き起こしやすく、休息が必要です。
Emotional Reactivity(感情的反応の強さ) & Empathy(共感力)
他人の感情に対する共感力が高く、他者の喜びや悲しみを自分のことのように感じます。この感情的な反応は強みでありながら、エネルギーも消耗します。
Sensitivity to Subtle Stimuli(微細な刺激への感受性)
周囲のちょっとした変化や人々の態度の違いなど、普通なら見過ごされるようなささいな刺激に気づきやすい特徴を持ちます。観察力が鋭く、気にしすぎるとストレスがかかります。
HSPが泣きやすい理由
HSPは以下の特徴を持っているため泣きやすい傾向にあります。
共感力が高すぎる
HSPは他人の感情に非常に敏感で、怒りや悲しみ、喜びなどを自分のことのように感じとることがあります。そのため外からの影響で感情が大きく揺さぶられてしまいます。
刺激処理が深い
HSPは表面的な出来事でも深く考え込み、細部まで感じとる傾向があります。そのため、ささいに見えるできごとでも心が圧倒されて涙が出てしまうことがあります。
罪悪感を抱きやすい
他人に迷惑をかけたくなかったり、絶対に失敗したくないと強く思ってしまうため、自分を強くせめてしまう傾向にあります。その結果、整理しきれない感情が涙として現れてしまうことがあります。
心を楽に保つための方法
- HSPについて知る
- 自分の感情を受け止める
- 思ったことを書き出す
- 話を聞くのはもう一人の自分
- SNSで他のHSPさんのことを知る
- 刺激を予防する
HSPについて知る
「HSPって気質があるんだ」「けっこう当てはまってるかも」「自分はHSPだから生きづらいのか」なんて軽い知識だけで自分が生きづらいだけと決めつけていませんか?
HSPは病気ではなく気質のため、治すという概念はありません。ですが自分の気質を知り、何が得意でやっていて充実するか、何が苦手で嫌な思いをしているのかを知っているのと知らないのでは生きやすさに大きな差がでます。
HSPという概念自体が定義されたのは比較的最近のことですが、こういう特性もあるんだと心を救われた方も多くいらっしゃるようです。
ただ、そこで止まることなく、生きづらさを少しでもなくすように自身で工夫をしていくことが大切です。
HSPだから…と気質を言い訳にするのではなく、HSPの自分だからこそ「こうしよう!」と自分で考えて行動しましょう。
自分の感情を受け止める
HSPさんは自己肯定感が低く、自分を責めたり、考えすぎたりすることが多くあります。「こんなことが嫌だった…」「自分はなんでダメなんだ…」なんてネガティブな感情に支配されて落ち込んでいくことも。
この際に気をつけたいのは感じたことを事実として受け止めることで終わらせること。何事もついつい深く考え込んでいく性格のため、考え続けていると最終的には自分が悪い、自分がこれを直さなければと強く自分を責める結果になってしまいます。
こうなる前に「こんなこと言われてショックだった」「今日のあの仕事は辛かった」など事実として感じたことを客観的に認識するのです。起こったことに変わりはありませんが、考え込む前に客観的な事実と認識することで落ち込むことがなくなります。
思ったことを書き出す
自分の感情を受け止めることができるようになったら、合わせて感じたことを書き出すことにチャレンジしてみましょう。スマホやPCで打ち出す方法も有効です。
大事なのは感じていることを内に留めるのではなく、外に出すこと。「人間関係に疲れた」「毎日相談されるのはしんどい」などの事実を書き出すことで自分の感情を整理しやすくなるのです。
他にもメリットがあり、思ったことを外に書き出すだけで人間はそれを忘れるような仕組みになっています。心に引っかかることがある際に、ずっと考え続けてつらい思いをし続けるのではなく、定期的に外に出して嫌なことを忘れていくようにしましょう。
話を聞くのはもう一人の自分
共感力が高いHSPさんは、人と話しているとその人の感情に引っ張られてしまうことがあります。また、他人に嫌われるのを恐れるため、相手を気遣った行動が中心で自分が犠牲になることもしばしば。
こんなことが続いてしまうと強いストレスが溜まり、人と関わるのが本当に嫌になってくるのです。
この特性、実はとっても素晴らしい特性です。人の細かい変化に気づいたり、その場の状況によって配慮できたりするのでみんながそう簡単にできることではありません。ただ、こんな素晴らしい特性のせいで行きづらくなるのは嫌ですよね。
こんな時は自分の後ろにもう1人の自分が立っている感覚で、眼の前の二人が会話をしているというような俯瞰した目で状況を見てみてください。相手に寄り添おうとして共感しすぎて疲れてしまうのなら、共感する自分すら他人に見えるように一歩引いた立場から見るように意識することで共感しすぎることを防ぐことができますよ。
SNSで他のHSPさんのことを知る
これって自分だけなんじゃ…と思って苦しい思いをしていませんか?あなたの他にも世の中にHSPさんたくさんいます。ここ数年でHSPという気質が定義された事によって、今まで認識できていなかった人も多く気づくきっかけになりました。
SNSではHSP気質な自分がこんな時につらい思いをした、こうやって乗り切っているなどいろんな情報発信をしている人がいます。交流するのに気が引けるのであれば見るだけでも構いません。自分以外にも同じようなことを感じている人がいることがわかるだけでも心が少し楽になります。そんな時間を作ってみませんか?
もし交流してみたくなった場合でも、対面して人と話すわけではないので気楽に行いやすいのもメリットです。趣味が合いそうな人、同じ悩みを抱えている人などと励ましあいながら生活するのも一つの方法です。
刺激を予防する
HSPさんは五感が鋭いため色々な刺激を受けてしまいがちですが、色々なアイテムを活用することで軽減することができます。
有効に利用できるアイテム一覧はこちら。
視覚 |
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聴覚 |
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嗅覚 |
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HSPさんの疲れの取り方は別の記事でも紹介しています。こちらも参考にしてください。

HSPとの向き合い方
HSPの特性と向き合うためには「敏感さ=弱さ」ではなく資質であると受け止めることが必要です。その上で自分に合った生活スタイルを見つけて過ごしていくことがおすすめです。
実体験より有効だと感じたポイントを一つ紹介します。
自己否定ではなく、自己受容を育てる
自己受容とは「今の自分の感じ方や反応をそのまま認めてあげる」ことです。
例えば「職場で泣いてしまった」としましょう。これに対して否定や後悔をするのではなく、以下のような考え方ですごす習慣を身につけるのが有効です。
【泣いた】という事実に対しては…
「それほど心が動いた」
「それだけ真剣に向き合っていたという証」
と捉え、それができた自分を認めてあげるように心に語りかけてあげましょう。
HSPは他人には思いやりを持って接することができても、その優しさを自分に向けることが苦手な人も多くいます。
自分に優しくならなければいけない訳ではありません。ですが、自分を味方にすることは敏感さと共に生きていく上でなによりも力になります。
ひとつひとつの事実に対して否定やネガティブな感情を抱くのではなく「そんな自分でもこうやって生きていられる」「問題ない、大丈夫」と受け止められるようになりましょう。それが心の安定と回復力を育む大切な土台となります。
自己受容を育てるためにはこんなワークもおすすめです。簡単なのでぜひチャレンジしてみてください。
⚫︎1日ひとつのできたことリストを作成する | |
目的 | 自己否定を減らし、ありのままの自分を認める習慣づくり |
方法 | 1日の終わり(寝る前がおすすめ)に今日できたことをノートやスマホのメモ帳などに1つ書く |
期待される効果 | 自己肯定感の向上につながり、「できない自分」ではなく「やっている自分」に気づくことができる |